すばらしき世界

★3.8くらい
【ネタバレ注意】
居場所がほしい男と居場所を与えたい人たちと居場所のない社会。
実在の元殺人犯をモデルに書かれた小説『身分帳』が原案のドラマ。

【あらすじ】
「今度ばっかりは、カタギぞ。」
下町で暮らす短気な性格の三上は困っている人を放っておけない優しい一面も持っていた。
過去に殺人を犯し人生の大半を刑務所の中で過ごしてきた彼は何とかまっとうに生きようともがき苦しむ。
そんな三上に目をつけたテレビマンの津乃田とプロデューサーの吉澤は彼に取り入って彼をネタにしようと考えていた。

【感想】
足を洗いたいけど洗えない持病持ちのヤクザって割とありそうな設定だけど、痴情のもつれや組とのいざこざではなく、正業に就けず社会に居場所を見つけられないことに苦しむ姿を描いているのが新鮮でした。
メインの登場人物も医者、ヒロイン、敵役とかのいかにもメロドラマみたいなのじゃなくて、ケースワーカー、スーパーの店長、身元引受人、TVディレクターだし、ちゃんと社会派ドラマになってます。
三上以外の視点も取り込んでるけど散漫にはなってないし、人の描き方もそれほどわざとらしい感じはしませんでした。
介護施設の職員が同僚を馬鹿にする場面では少し作為的なものを感じたけど、現実でも割とみんな他人の陰口で鬱憤晴らしするの好きだよなぁ…と複雑な気持ちになりました。
あの辺は三上が心の綺麗な善人で、周りの人間が義理も人情もない人非人、みたいな単純な描き方にならないような絶妙なバランスだったと思います。
人情に厚い三上が必死に心を押し殺して周りに同調するところは見ていてつらかった…
三上の抱える問題の要因として母子関係を取り上げるのもちょっと今風な感じがして良かったです。

それだけに最後の最後で浪花節っぽくなってしまったのが残念。
花束片手に電話で前妻と会う約束して、カヴァレリア・ルスティカーナ(今から死にますよって感じの曲)流して、そこまで死を盛り上げるなくてもいいだろと思いました。
はぐれものの死にカタルシスを感じさせるのは少し古臭いなぁと。
そこを裏切ってくれるのではと期待しながら観てたんですけどね。
純粋過ぎる三上は周りのサポートがあっても現代では生きられないという落としどころまぁ仕方ないとして、ラストで無理やり泣かせるような演出しなくても良かったのでは?と思いました。
他にキツいシーンいっぱいあるんだし。
ナレ死みたいなさり気ないので良かったかなーと思いますけどね。

まぁ最後こそがっかりだったけど全体としては古いヤクザ系メロドラマから抜け出せてて良かったと思います。
方言キツめでちょっと聞き取りづらいセリフも良かった!
役所広司の演技だけでももう一回見たいです。実際に見返すかどうかは分からないけど。

でも二回観たら一回目でも思わず笑っちゃった下階の住人との喧嘩や教習所のシーンはなんとなく笑えなくなりそう。

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